運動キライ

リカコは運動が昔から苦手であった。

学生時代、バスケットボールを習った際は、とりあえず誰かがボールを持つとアニメ鬼太郎に出てくる『ぬりかべ』の様にその人の前に立ちはだかり、ぴょんぴょん飛んで投げようとするのを邪魔する事だけが出来たため、それ一本に勤しみ励み、うっかり自分にボールが回ってきてキャッチでもしよーもんなら、周りを囲まれ『キャー誰か助けてー😱！！』と叫び、とりあえずどこかにボールを投げるという、試合にならない女であった。

バレーボールを習った際は、順番が回ってきても、打ったサーブが天井に飛んでいき『天井サーブ』で終了する女で、社会人になってゴルフを習っても、ボールは飛ばない上に右左と自由自在にボールが飛んでいくため、あちこち森を走り回り、時には隣のコースにちょっとお邪魔して、謝りながらまた自分のコースに戻り、今日一緒に来た人とラウンド中に並んで歩くことはなく、1人でそーとー汗だくの『ゼーゼーはーはーの呼吸』となり、楽しくお話しなんて出来ない、一回スタートしたらラウンド中はもう会えないと言っても過言ではない、という有り様であった。

社会人になってのゴルフは、大人ならゴルフも少々たしなんでいた方が良いであろうと思い、自分から進んで始めたものの（誰もやれとは言ってない）練習場に行く時は運動嫌いなのでものすごく暗い顔で（自分で誘ったのに）ため息をつきながら到着し、行けば楽しいけど、なかなか次の練習日がやってこないという流れでありました。

縄跳びとか竹馬とか好きだったのに、運動するのは嫌いで、家で色々工作したりするのは好きでした。インドア派なのか、とりあえず。

運動から離れ、ぷよぷよ増量で穏やかに過ごしていたところ、旦那さんからどこかのスポーツジムに申し込む際に『アナタも同時入会を』と通告を受け、パニックになった。どうやらお客様のお付き合いでの入会との事らしく（か、どうかは本当はわからない、もしかしたらリカコのぷよぷよなのが可哀想になったのかもしれない）

仕方なく怒りといじけながらトレーニングウェアと、そこはプールもあるらしく、水着も購入し、どうせ続かないだろうからと思い、安くてサイズが入る変なやつにした。（投げやり）

まず初日はスタッフの方が親切にマシンの使い方を色々優しく教えてくださり、なんとか楽しく終えた。（運動はほぼしてなかったので楽しかった模様）

ロッカーでは、仲良しの奥様方が『おつかれ〜❤️来てたの〜？』なんて盛り上がってて、人見知りのリカコはポツンと1人で寂しくいじけて着替えて帰った。

何日かして２回目ジムは今度はプールに行ってみようと言うので、このぷよぷよの体を人様の前に晒すのかと思ったけど、なんだかもうヤケクソになってるとこがあって、その日も『えー来てたの〜？分かんなかった〜❤️』なんて言うどこかのいいとこの奥様方の会話を聞きながらまた1人ポツンと寂しく着替え、プールに向かった。

初めは水中を歩いて…なんてやってたけど、進まないし面白くなくて、泳ぐコースに行ってみた。

思い出した。息継ぎができないんだった。

何年も泳がなかったから忘れてたけど、クロールで息継ぎが出来ない人だった。

高校の体育の補習を受けた際、25メートルをせーので皆んな一斉にクロールで泳げと言われ、息継ぎが出来ないリカコは必死に行けるとこまで猛ダッシュでクロールして進み、もー無理だー息が続かない😱ってなった時に、鯨の潮吹きみたいにブォファッ！！と水面から立ち上がり、振り返ると仲間達はまだ後ろの方で、またリカコは呼吸を整えて、あと半分死にそうになりながらも必死で猛ダッシュクロールをして、25メートル到着したら、厳しい体育教官から『お前早いな』と言われたけれど『息継ぎが出来ず死に物狂いなので当たり前だ』と思った、返事もせずに。（ちょっとスレた高校生だったので）